理事の相続コラム

当ネットワークの理事(弁護士・税理士・司法書士)が相続問題に関するコラムを執筆しています。

相続登記の申請期限について

Q.相続登記はいつまでにしなければなりませんか。

A.相続税の申告のように相続登記はいつまでに申請をしなければならないという期間の制限はございません。

ただし、手続きをすることなく時間が経過すると当初想定していなかった方が関与しなくてはならなくなるなど、関係が複雑になるためできる限り早めに手続きをされることをお勧めします。

 

【当職が担当した実例】

前提:A男とB女は結婚し、子供なし。

財産:自宅不動産のみ。

 

A男は平成4年に死亡した。A男B女の間には子供はなく、A男の両親も死亡しているため、相続人は配偶者であるB女とA男の兄弟姉妹であった。

B女は、相続財産が自宅不動産のみであり、自身が住み続けることに何ら疑問も抱かず、また、A男の兄弟姉妹とも関係は良好なためいざ手続をするとなった際にはすぐに協力を得られると考え、自宅の名義をA男のまま変更することはなかった。

7年後の平成11年B女が死亡した。B女の両親も既に死亡しているため、A女の相続人もやはり兄弟姉妹のみであった。

A女死亡後、自宅不動産はA女の弟Cが管理し、固定資産税等も立替えて納付していた。Cも年金暮らしで固定資産税の立替えの負担が重くなり、不動産を相続する人を決めるため、遺産分割協議を考えた。

 

そこで重大な問題が発覚します。

 

それは、遺産分割協議の対象者が25人もいるということでした。A男の兄弟姉妹とB女の兄弟姉妹が対象者であり、見ず知らずの他人同士が話し合いをしなければならなくなったのです。当然ながら話し合いはまとまらず裁判所を介する手続きに移行し、解決まで11年の歳月がかかりました。

 

これは例外的な場合ではなくごく一般的に起こるものです。時間の経過とともに相続関係は複雑さを増し、当事者も増え続けるため、本来まとまるはずの話が一切進まず、親族関係が崩壊することは珍しい事ではありません。

労力を費やすのは遺された相続人です。そのような争いを防ぐためにも相続登記はできる限り早めにされることをお勧めいたします。

 

(担当 司法書士中西健太)

遺産の評価方法

遺産を分割するとき、どのように評価するのか。今回は、事例を挙げて、不動産と株式の評価方法について、お話致します。

 

【相談事例】

 母が7年前に亡くなりました。母の遺産は,私の住んでいる自宅の土地です。家は私が建て,母と同居していました。母の相続人は,私のほかに兄と妹がいますが,遺産を兄と妹と分けるとなると,この土地の値段を評価しなければならないと思うのですが、どのように評価すればよいのでしょうか。

その評価は税金のときと同じ方法によるのでしょうか。

私名義の家が建っている場合には,どのように評価しますか。

また,母は、上場されていない叔父の小さな会社の株を持っていますが,相続財産にはその会社の株も入っています。このような会社の株の評価は,どのようにしたらよいでしょうか。

 

【回答】

(1)不動産の評価は税金の計算額とは異なります。

  遺産分割の際の土地の評価は,分割時点での時価を基準とします。

  時価とは,不特定多数の私人間の自由な取引が行われるとしたら成立するであろう値段のことです。

  実際に売るわけではないので,取引事例や公示地価,相続税評価額,固定資産税評価額などを参考にして評価します。

 

(2)他人の家が建っている場合には,その利用権分を差し引いて評価します。無償利用の場合ですと、10〜30%程度差し引くことが一般的です。

 

(3)上場されていない会社の株の評価は,一律の基準があるわけではないので困難な面があります。相続税の評価方式を参考にしながら,公認会計士などの専門家に委嘱して計算してもらうこととなります。

 (弁護士 堀江竜太)

相続税が増税されると聞いたのですが、私たちに相続税はかかりますか

平成27年に相続税が増税されることが決まってから、相続税がどのくらいかかりますかという相談を受けることが多くなりました。

相続税は、まず亡くなった方の財産をすべて合計し、その合計額から基礎控除を引いて計算します。つまり、相続財産の合計額が基礎控除を下回る場合には相続税はかかりません。

現在、基礎控除は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」ですが、平成27年以後に発生する相続では「3,000万円+600万円×法定相続人の数」になります。

増税後は、5,000万円が相続税がかかるボーダーラインといってよいでしょう。

相続税の対象となる財産の主なものといえば、土地、建物などの不動産、預貯金、株式、などの有価証券、生命保険金、退職金などがあります。

預貯金や上場株式はだいたいの金額が分かると思いますが、土地、建物はどのように評価すればよいのでしょうか。

毎年送られてくる固定資産税の課税明細にのっている固定資産税評価額をみると、土地、建物のおおまかな相続税評価額が分かります。

建物は基本的に固定資産税評価額がそのまま相続税計算上の評価額となるので簡単です。

土地は本来、国税庁が公表している路線価で計算するのですが、固定資産税評価額の

1割増しが相続税評価額と考えればよいでしょう。マンションの場合は敷地全体の評価額が記載されているので、敷地権の所有割合を乗じることを忘れないでください。

ここまでくると、土地、建物を含め、すべての財産のおおまかな相続税評価額が分かりますので、それらを合計します。この合計額が5,000万円を下回るようであれば、相続税の心配はほとんどありませんが、逆に上回るようであれば、相続税が発生する可能性があります。

ただし、実際の相続税の計算では非課税の財産や計算上の特例などがあるため、合計額が5,000万円を上回っていても、必ずしも相続税が発生するということではありません。

相続の相談を受けていると、相続税がかからない人が必要以上に心配をしていたり、逆に、相続税がかなりかかりそうな人が何の準備もしていないことがよくあります。

要は自分たちが相続税の対象になるのかを事前に知っておくことが大切ということです。

相続財産の合計額が5,000万円を大きく超えるようであれば、早めに税理士に相談し、生前から相続税の準備をした方がよいかもしれません。

 

担当 税理士 原 正長

寄与分について

親の遺産を兄弟姉妹で遺産分割する場合など、寄与分や特別受益が主張されることが多いと思います。そこで今回は、代表的な寄与分の態様についてご紹介したいと思います。

 

@病気療養中の被相続人の介護

 金銭的負担を伴わない介護でも、「療養看護」として寄与分が認められる場合があります。これが寄与と認められるためには、その介護が必要であったこと(例えば要介護の認定を受けていたとか、足腰が不自由であったとか)を裏付け資料によって説明できる必要があります。この点に関しては、一般的に被相続人の入院中よりも、自宅療養をしていた期間の方が寄与と認められ易いようです。また、具体的な介護の内容・程度が「特別の寄与」といえるかどうかも問題になるため、介護の内容について介護日誌のようなものをつけておくのも有用です。

 

A財産上の給付

 金銭その他の財産の贈与、不動産の無償貸与などは、「財産上の給付」として寄与分が認められる可能性が高いといえます。民法では「被相続人の事業に関する…財産上の給付」と規定されていますが、事業に関するものでなくても寄与と認められることがあります。この寄与分が認められるためには、いつ、どのような財産上の給付をしたのか、客観的資料により裏付ける必要があります。

 

B扶養

 被相続人と同居して食費等を出してあげていた場合、上記Aと同様に「財産上の給付」にあたるとも考えられますが、親族としての扶養義務との関係で、特別の寄与といえるかどうかが問題になります。

 

寄与分が認められるケースは上記に挙げたほかにもありますが、いずれの場合でも、無償の寄与であること、特別の寄与であること、それによって被相続人の財産が維持又は増加したことなどが必要とされ、寄与行為の内容については、ある程度まで客観的な資料で裏付けることが要求されます。

 

最後に、寄与分が争われやすい典型的なケースとして、兄弟のうちの1人が親と同居して面倒をみていたケースが挙げられます。将来の争いを避けるという観点からは、親の介護・扶養の方法や費用負担について、あらかじめ兄弟間で何らかの合意をしておくか、まめに話し合うことをお勧めします。

(弁護士 西井 伸顕)

教育資金の一括贈与に係る贈与の非課税措置

 平成25年4月1日から平成27年12月31日までに、30歳未満の子・孫が、父母・祖父母(直系尊属)から教育資金の贈与を受けた場合、1,500万円(学校以外は500万円)まで贈与税は非課税となります。

@信託会社、金融機関、証券会社等と教育資金管理契約を締結します。

A教育資金管理契約を締結した金融機関に「教育資金非課税申告書」を提出します。

B受贈者は払い出された金銭を教育資金の支払いに充当したことを証する書類を金融機関へ提出する必要があります。⇒税務署に行く必要はありません。

 

Q&A

Q1 孫が2人いるけれども、それぞれ使えるの?

A1 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校以外は500万円)が非課税となりますので、それぞれ使えます。

 

Q2 孫1人への学校への教育資金1,500万円と学校以外の教育資金500万円で2,000万円まで非課税となるの?

A2 非課税限度額の総額は1,500万円です。

塾や習い事等について500万円を上限に1,500万円の非課税枠に含めて考えます。

 

Q3 学校等には何が含まれますか?

A3 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院、専修学校、各種学校、保育園、保育所に類する施設、認定こども園などです。

 

Q4 どのような費用が非課税の対象になりますか?

A4

@入学金、授業料、入園料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など

A学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用などです。

 

Q5 500万円の非課税枠の対象となるものはなんですか?

A5 学習(学習塾、家庭教師、そろばんなど)、スポーツ(スイミングスクール、野球チームでの指導)文化芸術活動(ピアノの個人指導、絵画教室、バレエ教室など)教養の向上のための活動(習字、茶道など)の指導の対価(月謝、謝礼、入会金など)として支払う費用や学校等で必要となる費用を業者に直接支払ったものなどは学校等が認めたものは500万円までの非課税枠の対象になります。

 

Q6 30歳までになるまでに教育資金に充てられなかった金銭はどうなるの?

A6 教育費以外に使われた場合や、30歳までに教育資金の支払いに充てられなかった金額は、贈与税の対象になります。

 

Q7 教育資金の一括贈与に係る贈与の非課税1,500万円も、相続開始前3年以内の贈与で、相続税の課税価格に加算さてしまうの?

A7 教育資金の一括贈与に係る贈与の非課税1,500万円の特例を適用受けた金額は、相続税の課税価格に加算されません。

(税理士 河原幸司)

一人暮らしをしている高齢の姉のことが最近心配です。(成年後見の役割)

「事例紹介」

 Aさん(77歳)には姉(81歳)が一人います。しっかり者の姉でしたが、最近ちょっと心配になることがありました。ATMの前で操作の仕方や暗証番号が分からなくなったり、慣れ親しんだ道を迷うようになってきたりしました。

 また、姉の自宅に行ってみると、通信販売で買った物が山のように溢れていました。Aさんは、姉がちゃんとお金の管理をできているか心配になってきました。姉のお金の管理やこれからのことをどのようにサポートしていったらいいか、相続になったらどうなるか等々Aさんは心配になってきました。

 新聞等で認知症の高齢者をサポートする成年後見人のことを読んだりします。姉にも必要でしょうか。

 

 成年後見人は、判断能力が衰えた人の財産管理を主な仕事としております。通帳の管理や公共料金の支払い・病院の入院手続・介護施設の入所手続などを本人に代わって行います。

 人は、いつまでも元気で自分のことは自分でやっていきたいと思っているのではないでしょうか。しかし、認知症等で状況を十分判断できなくなっていくと、必要のない物を勧められるままに購入したり、公共料金・税金の支払いを怠ったりすることがあります。この様に、不必要なものを大量に購入したり、逆に公共料金の支払いを遅滞するようになったら、お金の管理を信頼できる人に託す必要があります。

 このような場合、本人のサポートをするのが成年後見人です。成年後見人は国が当然選任するのではありません。本人若しくは4親等以内の親族が家庭裁判所に申し立てることによって、成年後見人が選任されます。

 成年後見人の候補者には身近な親族の方でもなることができます。しかし、身近な親族も高齢だと、成年後見人の任務は全うできないかもしれません。そのような場合には、弁護士・司法書士・行政書士等の専門職を成年後見人の候補者とすることができます。

 成年後見人の仕事は、お世話をしている方が亡くなるまで続きます。その方が亡くなるまで、その方のお金を維持・管理しなければなりません。要は、その方がその人らしく暮らしてゆけるよう、お金を大事に管理することが必要です。したがって、株式投資や外車の購入、自宅の不必要な改築等はいくら成年後見人であってもできません。

 一人暮らしの方に成年後見人がついていると、財産内容が把握できているので、いざその方に相続が発生しても慌てることがないというメリットもあります。

担当 司法書士 神谷 直

子どもがいない夫婦の場合、遺言を遺すことが必須です。

【事例紹介:子どもがいないケース】

 弁護士として相続相談の現場で多く目にするケースというのが、お子さんがいない夫婦の場合です。

 例えば、お子さんがいない夫婦で、夫に先立たれてしまったという場合、相続はどうなるでしょうか。

 この場合は、夫の遺産は全て妻が相続と思われる人も大勢おられます。

 

 しかし、相続人というのは、順位があります。

 まず、配偶者、ここでは妻というのは、第1順位で、しかも必ず相続人となります。

 妻と同率1位なのが、子どもです。

 妻一人、子一人の場合は、半分ずつ遺産を分けます。

 

 では、子どもがいなかった場合はどうなるか、第2順位の相続人は親になります。

 したがって、夫の親がまだ存命だった場合は、妻が3分の2、親が3分の1を相続することになります。

 

 しかし、夫が高齢の場合には、夫の両親も既に他界している場合が通常です。そうなると、第3順位は夫の兄妹が相続人となるのです。

 この場合は、妻が4分の3を相続し、残りの4分の1を夫の兄弟姉妹が相続する、ということになるのです。

 

 このようなケースというのが実は一番多くて、しかも問題になります。

 相続を経験された方はご存知かもしれませんが、例えば夫が無くなった場合、夫の名義の預金口座は凍結されてしまいます。自宅などの不動産の名義を変更するにも、相続人全員の協議書がなければ変更できません。

 団塊の世代の方ですと、兄妹が10人とか大勢いるケースも多いですので、妻は夫が亡くなった後に、その兄妹全員から実印と印鑑証明をもらったり、ということをしないと、夫名義の財産をどうすることもできなくなってしまうのです。

 

 さらに、代襲相続、というものがあります。これはどういうことかというと、夫が亡くなる前に夫の兄妹がなくなっていた場合、相続権というものは夫の兄妹のさらにその子どもに承継されるのです。

 夫の兄妹が既になくなっていて、その兄妹がさらに何人もお子さんを生んでいた、という場合、夫の兄弟の子ども全員の印鑑ももらわなければならない、ということになるのです。

 

 私が関与したケースでは、お子様がいない方が亡くなって、その兄妹が相続人となったのですが、亡くなっていた兄妹もいたりして、結局19人の相続人がいた、というケースがありました。

 このケースでは、皆がもめていたというわけではないのですが、しかし、19人の意見を統一することも難しかったので、結局裁判所の調停という手続きを利用して、相続問題を解決せざるをえませんでした。

 

 さらに最悪なのが、夫の遺産が自宅の不動産しかないような場合です。

 この場合、たいていは妻がそのまま自宅に住み続けることになるのですが、先ほど言ったように、夫の兄弟がいた場合、夫の遺産の4分の1については相続する権利があります。

 したがって、いじわるな兄弟がいる場合には、妻に対して、

 自宅の持分4分の1をよこせ、とか、

 自宅に住み続けるならばその分の代償金を払え、

と要求してくるのです。

 預貯金があれば良いのですが、ない場合には、最悪自宅を処分しなければならなくなってしまうのです。

 

 こういった、お子さんがいないケースでは、今まで述べてきたことを防止するためには、遺言を残す、ということが必ず必要です。遺言を残しておけば、以上のような問題は全て防止することが可能です。

弁護士 北村 亮典

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